太田ステージの理論と実践への活かし方を伝える4冊

2023.12.04 書籍紹介

自閉スペクトラム症の発達段階を評価する太田ステージ、その理論と実践への活かし方を伝える書籍4冊について、執筆に携わった先生方にお話を伺いました。

  1. 太田ステージとは
  2. 太田ステージが活用されている現場
  3. 書籍活用事例
  4. 太田ステージの利用と発展



1. 太田ステージとは

LDT-R

太田ステージは、認知発達の質の差異に着目して、大きく6つの発達段階を設定したもので、さまざまな発達障害の療育・支援を考えるうえで大切な発達的視点を与えてくれるものです。発達段階の評価は、LDT-R(Language Decoding Test-Revised;言語解読能力検査改訂版)によって行いますが、この検査は、使用する用具が少なく、5~10分程度で理解力の目安を得ることができます。検査によって把握された各ステージには、その段階に応じた治療教育や具体的な対応・支援についての指針がまとめられています。

LDT-Rの販売は「NPO法人銀杏の会」HPをご確認ください。

2. 太田ステージが活用されている現場

太田ステージは、医療、療育、特別支援教育、福祉など、さまざまな現場で活用されるようになってきています。特別支援教育の現場では、自立活動の課題提供をはじめ他の教科や日常生活場面での一人ひとりへの適切な働きかけを考えるうえで役立っています。また、学校卒業後に利用する作業所や入所施設などの福祉施設でも太田ステージを手がかりに、作業課題の提示やコミュニケーションの工夫をしています。さらに、療育センターや保健所での発達健診、小児科医療の現場でも、簡便に評価できすぐに保護者へのアドバイスとしてフィードバックできる、というメリットがあります。自閉スペクトラム症に限らず、重症心身障害など他の発達障害への応用もされており、さまざまな障害のある人たちの幅広い年齢層(乳幼児期から成人まで)で活用されています。また、太田ステージで利用者の心や行動を理解することができるので、支援者も見通しがもてて気持ちが楽になる、という側面があります。

3. 書籍の活用事例

私たちは常に「理論」と「実践」を両輪にと考えており、どの本にもその両方が書かれています。ですから、「どの本から読み始めればいいですか?」というご質問をいただいた時には、「ご自身が読みやすいものからでよいですよ」とお答えしています。

自閉症治療の到達点第2版
自閉症治療の到達点 第2版

太田ステージの理論編です。太田ステージ開発の経過や研究データ、診断や薬物療法のこと、療育の実際、他の障害への応用、家族支援など、認知発達治療の全体像を把握するために活用されています。実践を重ねながら折に触れて読み返すことで、太田ステージの奥深さや幅広さを感じることができるとの感想が寄せられています。

自閉症治療の到達点2 認知発達治療の実践マニュアル
認知発達治療の実践マニュアル

太田ステージの実践編です。StageIからIII-2の発達課題(発達を引き上げるのに適切な課題:135の発達課題)があげられています。実践の手順やステージごとの学習課題例があげられており、療育や教育の専門家がご自身の活動のヒントとして活用されています。

自閉症治療の到達点3 StageIVの心の世界を追って
StageIVの心の世界を追って

『認知発達治療の実践マニュアル』になかったStageIV以上についての理論や実践、具体的な課題例などがまとめられています。特に高機能の幼児の療育や、特別支援教室(通級)での教育の参考になるようです。

太田ステージによる自閉症療育の宝石箱
太田ステージによる自閉症療育の宝石箱

ご家族の育児の指針にというコンセプトの本書は、幼児期と学童期の子どもへの働きかけを中心に日常での関わり方の具体例をふんだんに掲載しています。保護者だけでなく、児童福祉や特別支援教育にこれから携わる方の入門書としても活用されています。

4. 太田ステージの利用と発展

医療、教育、福祉などさまざまな現場での活用をもち寄り、支援内容を豊富にすることで、障害者のQOLの向上および生涯教育、そしてそれぞれの分野での臨床研究にも多大な貢献ができると考えます。

現在、太田ステージによる認知発達段階の評価そのものは広がってきていますが、その結果をどう実践に結び付けていけばよいのか悩んでいる人たちも多いという現状があります。ここにあげた書籍を通じて、太田ステージの発達的視点を学んでいただければ、さまざまな療育に関する方法論を、一人ひとりの状態に合わせて応用することが可能となり、障害者を取り巻く人たちの発達支援の礎になることと思います。対象となる方々の理解力を把握することは、その方が今、何が分かり何が難しいのか(可能性と限界)を知る手がかりとなります。それにより、本人に寄り添った支援を科学的根拠に基づいて実践でき、良好な関係づくりへつながります。また、障害者のコミュニケーション機器の活用や意思決定支援などについても重要な示唆を与えてくれます。

書籍名にある「到達点」という言葉ですが、著者代表の太田は「これは今の到達点をまとめたものだから」「その時代の到達点は常に次の時代への出発点」とよく話していました。自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害は、まだその本態が解明されておらず、分からないことも多いので、その時代の科学を結集し、彼らがよりよい人生を送れるように精一杯尽力することになります。その時々の最先端の知見を貪欲に学び、実践し理論化していく取り組みは、多職種が対話を重ねることにより一層深まり、進められていくものと考えます。

太田ステージの詳しい活用方法は「太田ステージ研究会」HPをご確認ください。




コラム監修・執筆

NPO法人銀杏の会役員・太田ステージ研究会役員 

亀井真由美先生(東京都立東大和療育センター)
鏡直子先生(NPO法人銀杏の会 御茶ノ水発達センター)

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