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MMSE-J精神状態短時間検査 改訂日本版

2022.03.01 検査解説

MMSE-J精神状態短時間検査 改訂日本版(以下、MMSE-J)は、世界的に使われている認知症スクリーニング検査Mini-Mental State Examination(以下、原版MMSE)の正規日本版です。原版出版社であるPsychological Assessment Resources, Inc.との契約に基づき作成されています。2012年に初版が、2019年に改訂版が発行されました。

検査は、認知機能を測る「時に関する見当識/場所に関する見当識/記銘/注意と計算(シリアル7課題、逆唱課題)/再生/呼称/復唱/理解/読字/書字/描画」の11のカテゴリーに関する一連の質問と課題から構成され、10分程度で簡便に実施できます。原版MMSEに忠実な翻訳と日本文化への十分な適応を行い、信頼性・妥当性の検証がなされており、国際標準としての役割を担う検査です。




《改訂のポイント》

  1. 「注意と計算」課題の施行法の見直しを行いました。
  2. 認知症と健常者の中間に属する軽度の認知症(MCI:Mild Cognitive Impairment)のスクリーニングが可能になりました。
  3. 新たにデータを収集して、再標準化を行いました。

テクニカルレポートには、改訂の経緯や内容などが詳しく書かれています。以下、日本版作成者である杉下守弘先生編集のテクニカルレポート#1~3を基に改訂のポイントを紹介します。


 

MMSE-J精神状態短時間検査―日本版 テクニカルレポート #1・2

原版MMSE「注意と計算」課題の施行法とMMSE-Jでの施行法について

MMSE-Jの「注意と計算」課題は、シリアル7課題と逆唱課題で作成されています。原版MMSEの「注意と計算」課題は、シリアル7課題とbackward spellingです。MMSE-J作成に際し、日本語の文字(漢字および仮名)にはspellingがないため、backward spelling課題に近似の課題として逆唱課題を採用しています。

テクニカルレポート #1・2では、原版MMSE「注意と計算」課題の5つの施行法を紹介し、MMSE-Jにおける「注意と計算」課題の施行法の確定およびその根拠となる研究成果について言及しています。

原版MMSE「注意と計算」シリアル7課題とbackward spelling課題の施行法

原法(1975) 受検者がシリアル7課題を行うことができない、あるいは行おうとしない場合、backward spelling課題を行う。
修正原法(2001) 受検者がシリアル7課題を行うことを拒否する場合のみ、backward spelling課題を行う。
第1修正法 シリアル7課題を行わず、backward spelling課題のみを行う。
第2修正法 シリアル7課題のみを行い、backward spelling課題は行わない。
第3修正法 シリアル7課題とbackward spelling課題の両方を行う。

MMSE-Jでは、修正原法(2001)に沿った「注意と計算」(シリアル7課題、逆唱課題)の施行法「受検者がシリアル7課題を行うことを拒否する場合のみ逆唱課題を行う」 を手引き・記録用紙に示しています。


MMSE-J精神状態短時間検査―日本版 テクニカルレポート #3

軽度認知障害(MCI)のカットオフ値について

認知症と健常者の中間に属する軽度の認知障害はMCIと呼ばれ、21世紀に入って広く使用されるようになりました。テクニカルレポート#3では、MMSE-Jでの「MCIと認知症の間のカットオフ値」および「健常者とMCIの間のカットオフ値」算出の論拠や値について言及しています。

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