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日本版WISC-IVによる発達障害のアセスメント ‐代表的な指標パターンの解釈と事例紹介‐

日本版WISC-IVによる発達障害のアセスメント ‐代表的な指標パターンの解釈と事例紹介‐
著者名 上野一彦、松田 修、小林 玄、木下智子 著
発行年月日 2015年01月30日
判・頁数 B5 262頁 
ISBN 978-4-8210-6371-0
価格 2,900円(本体 2,685円)
在庫 在庫あり 
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書籍概要
日本版WISC-IVによる最初のアセスメント解釈事例集。代表的な指標パターンを具体的な臨床事例で紹介。

これまでのWISC-IV関連の著作物を理論的背景とし、日本版WISC-IVを使用した最初のアセスメント解釈事例集。前半で、解釈にあたって必要な基本事項や心得るべき事項、アセスメントの手順等を解説し、後半で、代表的な指標パターンとそれに対応した具体的な臨床事例を紹介。新指標である一般知的能力指標(GAI)・認知熟達度指標(CPI)も解釈に加えている。
正誤表
下記PDFファイルよりご確認ください。
pdf 日本版 WISC-IVによる発達障害のアセスメント
著者・編者等紹介
【著者紹介】(所属・肩書きは第1刷発行時)
上野 一彦(うえの かずひこ)
東京学芸大学 名誉教授
本書における執筆分担:第1章、第2章、第5章
著書:『WISC-IIIアセスメント事例集―理論と実際―』(共編、日本文化科学社)、『LDI-R―LD判断のための調査票―』(共著、日本文化科学社)、『就学時の健康診断における知的発達スクリーニング検査』(共編、第一法規)等

松田 修(まつだ おさむ)
東京学芸大学 総合教育科学系教育心理学講座臨床心理学分野 准教授
本書における執筆分担:第3章、第4章
著書:『日本語版COGNISTAT認知機能検査』(共著、ワールドプランニング)、『回想法グループマニュアル』(共著、ワールドプランニング)、『臨床精神医学講座スペシャルイシュー第12巻 精神医学・医療における倫理とインフォームドコンセント』(分担執筆、中山書店)等

小林 玄(こばやし しずか)
立教女学院短期大学 幼児教育科 専任講師
本書における執筆分担:第5章
著書:『軽度発達障害の心理アセスメント―WISC-IIIの上手な利用と事例―』(分担執筆、日本文化科学社)、『S.E.N.S.養成セミナー 特別支援教育の理論と実践 第2版 II 指導』(分担執筆、金剛出版)、『改訂版 特別支援教育基本用語100―解説とここが知りたい・聞きたいQ&A―』(共編、明治図書出版)等

木下 智子(きのした ともこ)
渋谷区教育委員会 事務局教育振興部学務課 特別支援教育相談員
本書における執筆分担:第5章
著書:『新学習指導要領対応 特別支援教育の実践ガイド2 自閉症・発達障害への対応―基礎から応用へ―』(分担執筆、明治図書出版)、『エッセンシャルズ 新しいLDの判断』(分担翻訳、日本文化科学社)、『エッセンシャルズ 心理アセスメントレポートの書き方』(分担翻訳、日本文化科学社)等
書籍目次
まえがき
第1章 心理アセスメント概論
I 知能検査の歴史とWISC-IV
II 知能の定義と構造
III WISC-IVの枠組みと特徴
IV WISC-IVの今後の発展
V 日本版WISC-IVとその統計特性研究
VI 日本版WISC-IVにおける倫理規程
第2章 WISC-IVの合成得点の解説と解釈
I 解釈にあたって心得るべき基本ガイドライン―真の臨床家に求められるもの―
II 合成得点の解釈
III 任意の選択的拡張解釈①―新指標GAIとCPIについて―
IV 任意の選択的拡張解釈②―CHC臨床クラスターによる解釈―
第3章 WISC-IVによるアセスメントの手順
I 学習面や行動面のつまずきのある子どもの支援とアセスメント
II プロフィール分析(個人間差と個人内差の検討)
III 解釈を支援につなげるために
第4章 指標パターン(プロフィール)から見た発達障害児のニーズ
I WISC-IVによる発達障害児のニーズの把握
II WISC-IVプロフィールから学習面の困難に対する子どもの教育支援ニーズを把握するには
III WISC-IVプロフィールから行動面の困難に対する子どもの教育支援ニーズを把握するには
IV 臨床場面でよく見かける12プロフィールの総合的解釈とその留意点
V WISC-IVプロフィールの解釈に関するよくある質問
第5章 事例紹介
*頻度の高い情報処理に特徴のある代表タイプ
*新しい指標GAI・CPI からの解釈が可能なタイプ
*単独指標からつまずきの解釈がしやすいタイプ
*単独指標から得意な領域を推定しやすいタイプ
*頻度は低いが特徴ある学習・行動を示すタイプ
書籍目次詳細
まえがき
第1章 心理アセスメント概論
I 知能検査の歴史とWISC-IV
II 知能の定義と構造
 1 知能の定義について
 2 知能の因子構造について
 3 CHC理論について
III WISC-IVの枠組みと特徴
IV WISC-IVの今後の発展
 1 一般知的能力指標(GAI)と認知熟達度指標(CPI)
 2 臨床クラスターについて
V 日本版WISC-IVとその統計特性研究
VI 日本版WISC-IVにおける倫理規程
 1 心理検査はテスト・スタンダードに則って作られ、使われなくてはならない
 2 心理検査は十分な専門的研修を積んだ有資格者によって実施されなければならない
 3 保護者に検査結果のプロフィールをそのままコピーして渡すことは原則として認められない
第2章 WISC-IVの合成得点の解説と解釈
I 解釈にあたって心得るべき基本ガイドライン―真の臨床家に求められるもの―
 1 心理アセスメントは何のためにするのか
 2 検査結果が妥当かどうかに対して鋭敏でなければならない
 3 心理検査の結果は絶対的な真実ではない
 4 何を伝え、何を伝えるべきではないのか
 5 正確な情報と役立つ情報とは違う
II 合成得点の解釈
 1 合成得点は何を測っているのか
 2 全検査IQ(FSIQ)の解釈
 3 言語理解指標(VCI)の解釈
 4 知覚推理指標(PRI)の解釈
 5 ワーキングメモリー指標(WMI)の解釈
 6 処理速度指標(PSI)の解釈
III 任意の選択的拡張解釈①―新指標GAIとCPIについて―
 1 一般知的能力指標(GAI)
 2 認知熟達度指標(CPI)
IV 任意の選択的拡張解釈②―CHC臨床クラスターによる解釈―
第3章 WISC-IVによるアセスメントの手順
I 学習面や行動面のつまずきのある子どもの支援とアセスメント
 1 発達障害による認知機能の障害が子どもの日常生活に与える影響
 2 WISC-IVの結果はどう解釈するか
  1)個人間差の視点
  2)個人内差の視点
 3 解釈の方向性
  1)認知面の特徴から生活場面における支援ニーズを導く方向性
  2)認知面の特徴から脳神経機能障害や医学的治療の方針を導く方向性
 4 解釈は報告の内容と効果を左右する
 5 根拠に基づく解釈を行うために
  1)測定誤差に配慮した解釈を行う
  2)合成得点を基本とした解釈を行う
 6 プロフィール分析、その前に
  1)結果の妥当性を確認する
  2)解釈の方向性を確認する
II プロフィール分析(個人間差と個人内差の検討)
 ステップ1 全検査IQ(FSIQ)の検討
  1)FSIQからわかること
  2)確認すべき事柄
  3)FSIQの報告における留意点
  4)過去に受けたWISC-IIIの全検査IQとの比較における留意点
 ステップ2 言語理解指標(VCI)の検討
  1)まず確認すべき事柄
  2)VCIから認知面の何がわかるのか
  3)VCIの弱さは子どもたちの学習や行動にどう影響するのか
  4)VCIが弱い子どもに対する支援の基本方針
 ステップ3 知覚推理指標(PRI)の検討
  1)まず確認すべき事柄
  2)PRIから認知面の何がわかるのか
  3)PRIの弱さは子どもたちの学習や行動にどう影響するのか
  4)PRIが弱い子どもに対する支援の基本方針
 ステップ4 ワーキングメモリー指標(WMI)の検討
  1)まず確認すべき事柄
  2)WMIから認知面の何がわかるのか
  3)WMIの弱さは子どもたちの学習や行動にどう影響するのか
  4)WMIが弱い子どもに対する支援の基本方針
 ステップ5 処理速度指標(PSI)の検討
  1)まず確認すべき事柄
  2)PSIから認知面の何がわかるのか
  3)PSIの弱さは子どもたちの学習や行動にどう影響するのか
  4)PSIが弱い子どもに対する支援の基本方針
 ステップ6 指標得点間の差(ディスクレパンシー)の検討
  1)ディスクレパンシーからわかること
  2)ディスクレパンシーの解釈における留意点
 任意の選択的拡張解釈 一般的能力指標(GAI)と認知熟達度指標(CPI)の検討
  1)GAIからわかること
  2)GAIはどのようなときに活用するのか
  3)GAIの使用における留意点
  4)CPIからわかること
III 解釈を支援につなげるために
第4章 指標パターン(プロフィール)から見た発達障害児のニーズ
I WISC-IVによる発達障害児のニーズの把握
 1 WISC-IVからわかること
 2 教育支援ニーズとは何か
II WISC-IVプロフィールから学習面の困難に対する子どもの教育支援ニーズを把握するには
 1 学習面の困難に教育支援ニーズのある子どもとはどんな子どもか
 2 「聞く・話す」の困難に対する教育支援ニーズはWISC-IVプロフィールにどう表れるか
  1)困難の定義と子どもの実態
  2)困難の背景にあると考えられる認知プロセスの特徴
  3)認知プロセスの特徴はプロフィールにどう表れるか
 3 「読む・書く」の困難に対する教育支援ニーズはWISC-IVプロフィールにどう表れるか
  1)困難の定義と子どもの実態
  2)困難の背景にあると考えられる認知プロセスの特徴
  3)認知プロセスの特徴はプロフィールにどう表れるか
 4 「計算・推論」の困難に対する教育支援ニーズはWISC-IVプロフィールにどう表れるか
  1)困難の定義と子どもの実態
  2)困難の背景にあると考えられる認知プロセスの特徴
  3)認知プロセスの特徴はプロフィールにどう表れるか
III WISC-IVプロフィールから行動面の困難に対する子どもの教育支援ニーズを把握するには
 1 行動面の困難に教育支援ニーズのある子どもとはどんな子どもか
 2 「注意・行動制御」の困難に対する教育支援ニーズはWISC-IVプロフィールにどう表れるか
  1)困難の定義と子どもの実態
  2)困難の背景にあると考えられる認知プロセスの特徴
  3)認知プロセスの特徴はプロフィールにどう表れるか
 3 「社会性」の困難に対する教育支援ニーズはWISC-IVプロフィールにどう表れるか
  1)困難の定義と子どもの実態
  2)困難の背景にあると考えられる認知プロセスの特徴
  3)認知プロセスの特徴はプロフィールにどう表れるか
IV 臨床場面でよく見かける12プロフィールの総合的解釈とその留意点
 1 代表的な指標パターン(プロフィール)
  パターン① VCI高型(VCI>PRI≒WMI≒PSI)
  パターン② PRI高型(VCI≒WMI≒PSI<PRI)
  パターン③ WMI高型(VCI≒PRI≒PSI<WMI)
  パターン④ PSI高型(VCI≒PRI≒WMI<PSI)
  パターン⑤ PRI低型(VCI≒WMI≒PSI>PRI)
  パターン⑥ WMI低型(VCI≒PRI≒PSI>WMI)
  パターン⑦ 聴覚処理優位型(逆N型)(VCI≒WMI>PRI≒PSI)
  パターン⑧ 視覚処理優位型(N型)(VCI≒WMI<PRI≒PSI)
  パターン⑨ VCI・PSI優位型(凹型)(VCI≒PSI>PRI≒WMI)
  パターン⑩ PRI・WMI優位型(凸型)(VCI≒PSI<PRI≒WMI)
  パターン⑪ GAI優位型(VCI≒PRI>WMI≒PSI)
  パターン⑫ CPI優位型(VCI≒PRI<WMI≒PSI)
 2 プロフィールの総合的解釈における留意点
  1)強いところを見つけ、それを活用する方法を考える
  2)個人内差と個人間差という2つの視点から総合的に解釈を行う
  3)フラットなプロフィールにも意味がある
 3 発達障害によく見られるWISC-IVプロフィール
  1)ADHD群によく見られるWISC-IVプロフィール
  2)ASD群によく見られるWISC-IVプロフィール
V WISC-IVプロフィールの解釈に関するよくある質問
第5章 事例紹介
*頻度の高い情報処理に特徴のある代表タイプ
事例A 話すことにつまずきはないが、漢字の習得に困難が見られる小学校3年生(パターン⑦)
事例B 授業に集中することが難しく、話したいことを上手に他者に伝えることが苦手な小学校2年生(パターン⑧)
*新しい指標GAI・CPI からの解釈が可能なタイプ
事例C 高学年になって学習につまずきが生じ、不器用さもあるため自信や意欲がもてない小学校6年生(パターン⑪)
事例D 学習に遅れが生じて自信を失い、登校渋りが出ている中学校1年生(パターン⑫)
*単独指標からつまずきの解釈がしやすいタイプ
事例E 漢字の習得が難しく読み書きが苦手で、自己肯定感の低い小学校4年生(パターン⑤)
事例F 学習の定着が悪く、私語や離席、忘れ物が多い小学校5年生(パターン⑥)
*単独指標から得意な領域を推定しやすいタイプ
事例G 授業についていけない、集団行動が苦手な小学校6年生(パターン①)
事例H 学習もコミュニケーションも苦手で学習意欲が低い中学校2年生(パターン②)
事例I 理解するまで時間がかかり学習は遅れがちで、集団に入りたがらない小学校2年生(パターン③)
事例J 理解力が乏しく学習全般に遅れが見られる小学校1年生(パターン④)
*頻度は低いが特徴ある学習・行動を示すタイプ
事例K 落ち着きがなく、徐々に学習のつまずきが見られるようになってきた小学校3年生(パターン⑨)
事例L 状況理解が難しくマイペースで、勝ち負けにこだわる小学校3年生(パターン⑩)

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序文・はじめに・あとがき 等
【まえがき】
原版WISC-IVは2003年に発刊され、7年後の2010年に日本版が標準化され出版されました。本書はその日本版WISV-IVを使用した最初のアセスメント解釈事例集です。第5章の冒頭でも触れましたが、実際の臨床データの蓄積を背景に、4つの指標のパターンを基盤とした代表的なモデルパターンという形での解釈事例を紹介しました。  この間、WISC-IVについては、数多くの翻訳と著作が刊行されています。翻訳されたものとしては以下の2点があります。
・『WISC-IVの臨床的利用と解釈』 ・『エッセンシャルズ WISC-IVによる心理アセスメント』
 また、日本版WISC-IVの『実施・採点マニュアル』『理論・解釈マニュアル』発刊後、日本版WISC-IV刊行委員会からは以下の2点が刊行されています。

・『日本版WISC-IV換算アシスタント』
・『日本版WISC-IV補助マニュアル』

 そして、日本版WISC-IV刊行委員会からユーザーへの情報提供として、『日本版WISC-IVテクニカルレポート』も、すでに#1から#11まで、継続的に発信されています。
 本書は、これらのWISC-IV関連の著作物を理論的背景とし、日本版WISC-IVによる最初の事例解釈のための理論に基づく臨床事例集です。過去のウェクスラー知能検査類と比べ、WISC-IVは大きく発展し、その装いも内容も一新しました。本書では、原版ではすでに実用化されている新指標であり、日本版でも『補助マニュアル』で、はじめてその換算表が紹介された指標、一般知的能力指標(GAI)、認知熟達度指標(CPI)も、その解釈に加えています。
 現在、知能検査は単なる知的発達水準の推定だけでなく、学習困難の背景にある認知のスタイルや知能の個人内差についての研究が進んできています。それらの究極の目標は、単なる状態把握から、支援介入のための具体的な手掛かりの模索ではないでしょうか。かねてより、「支援は利用しやすく、効果があってはじめて支援の名に値する」と心に刻んできました。このことは心理アセスメントにとっても当てはまります。検査者や受検者にとって利用しやすく、その結果を受検者の理解と支援のために役立ててこそアセスメントの目的は果たされるのです。
 今日のさまざまな心理アセスメントのベクトルは、すべてこの方向を目指しています。本書はそうした目的のための方向づけであり、科学的なエヴィデンス集積の第一歩なのです。『日本版WISC-IVによる発達障害のアセスメント』は単なる事例を集めた解釈集ではありません。事例に基づく日本版WISC-IVの解釈の基本モデルを示したいという科学的なクールな思いと、この検査結果を発達障害のある児童生徒の支援介入にぜひ活かしたいという実践的なホットな思いの両方がそこにはあります。
 ここで扱った事例は、われわれが日本版完成後に扱ったたくさんの臨床事例のなかから選んで紹介するものです。WISC-IVの最初の解釈は、FSIQと4つの指標を基本とします。われわれはそうした代表的な指標パターンを具体的な臨床事例にそって選びここに示しました。繰り返しになりますが、解釈の基本は指標パターンであるという立場を大事にしたいと思います。下位検査解釈やプロセス分析は深い臨床的経験のなかから信頼性の高いものを発展的に解釈に追加します。この本邦における最初の臨床事例解釈集が、わが国におけるウェクスラー知能検査の新たなる礎となり、心理アセスメント活用のための書となることを心から願うものです。
 第5章の冒頭でも紹介いたしましたが、いち早く日本版WISC-IVを実用に移し、その臨床実践のなかから集積した資料によってデータを整えました。本書の目的を理解し、協力してくださった保護者の方々に感謝いたします。

著者 上野 一彦 松田 修 小林 玄 木下 智子  

【「第5章 事例紹介」より】
 第5章で扱う臨床事例は、日本版WISC-IV発刊後、われわれが教育相談や巡回相談、クリニックなどで出会った数百の事例のなかから選んだものである。そのケースの多くは、発達障害や知的障害の疑い、あるいはギフテッドを理由に心理アセスメントを求めてのものであった。われわれは理論からの代表的な指標パターン(第4章参照)と照合し、実際の頻度なども考慮しこの事例を選んでみた。これは解釈する側の利便性を考え、12の代表的な指標パターンに絞り込んだ、いわばモデル例である。そのなかには、典型的な発達障害事例が含まれる。同じパターンでも、知的発達水準の高低によっても事例の様相は異なってくる。
 ここで強調しておきたいのは、臨床的な診断名による指標パターンではなく、あくまでも指標パターンを優先して解釈し、そのなかで関連する臨床診断にも触れるという立場を貫いていることである。同じ診断名のつく子どもでも、知能の水準の違いによって解釈や指導内容も異なってくる。また、同じ診断名でも、他の障害が重複している場合もある。少なくとも診断名から同じ指標パターンが得られるのではなく、指標パターンの示す認知特性が、事例の臨床診断とどう関連しているのかを解釈することである。つまりは、目の前の子どもの実態として代表的指標パターンから何がわかるのかを解釈の基本に置いている。
 過去の多くの研究から、臨床診断症例によって典型的な指標パターンがあるというエヴィデンスが報告されている。しかし、それは一つの共通特性であって、その診断名と指標パターンとがいつも一致するわけではない。診断にしても他の障害との併存もある。ステレオタイプ的な解釈を避けるべきである。大切なことは目の前の子どもをよく見ること、その実態の一部を心理アセスメントによって明らかにしていくことであり、診断名もまた情報の一部でしかない。われわれの究極の目標は、そうした子どもの実態から支援介入の具体的な手掛かりを探り出すことなのである。  最後に、これら事例データの収集にあたっては、保護者の基本的な了解を得ているが、個人に関する守秘義務の立場から細心の注意を払い、代表的指標パターンからの解釈という本書の目的を考え、直接関連しないと判断される情報の一部については削除・修正を加えていることをお断りする。それは単なる臨床事例集ではなく、理論的解釈のための解釈モデル集とわれわれが考える所以でもある。
 なお、本章の事例は、実際の「検査結果報告書」、特に、保護者や学校宛ての非専門家向けの報告書の例示ではない。あくまでも、指標パターンの解釈の理解を深めるために書かれた事例紹介である。臨床実践で読者が実際に書く検査結果報告書は、被報告者の専門性や報告の目的に応じて内容や書式を整えなければならない。実際の検査結果報告書作成にあたっては、本書第1章の「VI 日本版WISC-IVにおける倫理規程」(17ページ~)、ならびに『日本版WISC-IVテクニカルレポート』#2、#4を参照してほしい。

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