書籍

 ジャンルから検索

  ・WISC関連
  ・WAIS関連
  ・DN-CAS関連
  ・その他アセスメント関連
  ・その他

 フリーワード検索

  
  
  
   

ダウン症ハンドブック 改訂版  家庭や学校・施設で取り組む療育・教育・支援プログラム

ダウン症ハンドブック 改訂版  家庭や学校・施設で取り組む療育・教育・支援プログラム
著者名 菅野敦、玉井邦夫、橋本創一、小島道生 編
発行年月日 2013年03月25日
判・頁数 A5 270頁 
ISBN 978-4-8210-7360-3
価格 2,592円(本体 2,400円)
在庫 在庫あり 
機関の方のお薦め購入先   販売代理店で購入する方
個人の方のお薦め購入先  
書籍概要
ダウン症に関する医学・教育・家族・福祉等の様々な事柄を満載したハンドブック

中心となる「生涯発達支援プログラム」は全面改訂。ライフステージごとに様々な領域でステップを踏んで進められるようになっており、家庭や教育現場ですぐに使えます!
著者・編者等紹介
【編者紹介】(第1刷発行時)

菅野 敦(かんの あつし)
特別支援学校の教員を経て、筑波大学大学院修士課程教育研究科に入学。修了後、博士課程心身障害学研究科に入学し、1988年に東京学芸大学に勤務。現在、同大学教育実践研究支援センター教授。博士(教育学)。専門は、知的発達障害の心理学。特に、乳幼児期から成人期、老年期に至る各期の発達特徴を明らかにし、支援方法を開発する生涯発達支援をテーマに研究。
主要著作:『ダウン症者の豊かな生活』(共編著、福村出版、1998)、『新ダウン症児のことばを育てる』(共編著、福村出版、2010)、『知的障害者の生涯学習支援』(共編著、社会福祉法人東京都社会福祉協議会、2010)、『改訂新版 障害児者の理解と教育・支援』(共編著、金子書房、2012)。

玉井 邦夫(たまい くにお)
1983年、東北大学大学院教育学研究科心身欠陥学専攻修士課程を修了。情緒障害児短期治療施設、山梨大学教育人間科学部を経て、現在、大正大学人間学部臨床心理学科教授。修士(教育学)。1997年より財団法人日本ダウン症協会理事長。専門は虐待臨床を中心とする障害児の家族支援と学校臨床。
主要著作:『〈子どもの虐待〉を考える』(講談社現代新書、2001)、『学校現場で役立つ子ども虐待対応の手引き』(明石書店、2007)、『特別支援教育のプロとして子ども虐待を学ぶ』(学研、2009)、『発達障害の子どもたちと保育現場の集団づくり』(かもがわ出版、2009)。

橋本 創一(はしもと そういち)
1989年、筑波大学大学院教育研究科修了。東京都立養護学校教諭、東京学芸大学特殊教育研究施設専任講師・助教授を経て、現在は同大学教育実践研究支援センター教授。博士(教育学)。専門は、臨床心理学、障害児心理学で、ダウン症児や知的・発達障害児の心理特性や発達支援、カウンセリングを研究する。
主要著作:『小1プロブレム・予防&改善プログラム』(共編著、ラピュータ、2011)、『「インクルーシブ保育」実践プログラム』(共編著、福村出版、2012)、『改訂新版 障害児者の理解と教育・支援』(共編著、金子書房、2012)。

小島 道生(こじま みちお)
2002年、筑波大学大学院博士課程心身障害学研究科修了。筑波大学文部科学技官、兵庫教育大学助手、長崎大学教育学部講師・准教授を経て、現在は岐阜大学教育学部准教授。博士(教育学)。専門は、発達障害・知的障害心理学。
主要著作:『障害児心理入門』(共編著、ミネルヴァ書房、2010)、『「自尊心」を大切にした高機能自閉症の理解と支援』(共編著、有斐閣選書、2010)、『人間関係でちょっと困った人&発達障害のある人のためのサポートレシピ53』(共編著、福村出版、2012)、『思春期・青年期の発達障害者が「自分らしく生きる」ための支援』(共編著、金子書房、2013)。
書籍目次
活躍するダウン症者
第1章 ダウン症の医学を理解する
第2章 生涯発達支援プログラム―可能性を伸ばし、豊かな人生を歩むために―
I 乳幼児期
〈総論〉乳幼児期の発達と支援のポイント
〈各論〉乳幼児期の発達支援プログラム
II 児童期
〈総論〉児童期の発達と支援のポイント
〈各論〉児童期の発達支援プログラム
III 青年期
〈総論〉青年期の発達と支援のポイント
〈各論〉青年期の発達支援プログラム
IV 成人期~壮年期
〈総論〉成人期~壮年期の発達と支援のポイント
〈各論〉成人期~壮年期の発達支援プログラム
V 退行・老化の予防
第3章 ダウン症を正しく理解してもらうために
I きょうだいへの説明
II 周囲の子どもへの説明
III 園・学校機関への説明
第4章 家族・福祉・地域支援・ネットワーク
第5章 困った!? こんなとき、どうする?―疑問解決・専門家からのアドバイス―
書籍目次詳細
活躍するダウン症者
はじめに
第1章 ダウン症の医学を理解する
 1.ダウン症候群の概略について
 2.染色体異常と遺伝
 3.呼吸器疾患
 4.肥 満
 5.心臓疾患
 6.頸椎異常
 7.消化器疾患
 8.皮膚疾患・アレルギー
 9.眼科疾患
 10.耳鼻咽喉科疾患
 11.歯科疾患
 12.てんかん
 13.その他の身体的特徴
 14.精神科疾患
 15.アルツハイマー病
 16.乳幼児健康診断
 17.児童期の健康
 18.青年期・成人期の健康管理
第2章  生涯発達支援プログラム─可能性を伸ばし、豊かな人生を歩むために─
I 乳幼児期
〈総論〉乳幼児期の発達と支援のポイント
 1.乳幼児期の心理・発達
 2.ダウン症児の早期発達支援
 3.幼稚園・保育所での支援
 4.専門機関での支援
 5.家庭での関わり
 6.就学相談
〈各論〉乳幼児期の発達支援プログラム
 1.「お座り~走る」を育てる
 2.色・形を見分ける力、物を操作する力を育てる
 3.コミュニケーションの基盤を育てる
 4.身辺自立の力を育てる
 5.遊びを育てる
II 児童期
〈総論〉児童期の発達と支援のポイント
 1.児童期の心理・発達
 2.小学校・放課後・専門機関での支援
 3.家庭での支援─身につけたいスキル&しておきたい体験─
〈各論〉児童期の発達支援プログラム
 1.運動技能を高める
 2.数理解と計算力を高める
 3.話す力を高める
 4.文字を読む力を育てる
 5.文字を書く力を育てる
 6.作文の力を育てる
 7.遊びや余暇活動を楽しむ
III 青年期
〈総論〉青年期の発達と支援のポイント
 1.青年期の心理・発達
 2.中学校・高等学校(高等部)での支援 
 3.専門機関での支援
 4.保護者の関わり
 5.就労・自立に向けた移行支援
〈各論〉青年期の発達支援プログラム
 1.体力の維持と運動の支援
 2.計算と金銭管理の支援
 3.コミュニケーションの支援
 4.豊かな余暇活動支援
 5.自立に向けた移行支援
 6.自分を理解することの支援
IV 成人期~壮年期
〈総論〉成人期~壮年期の発達と支援のポイント
 1.成人期~壮年期の心理・発達
 2.就労と職場での支援
 3.専門機関での支援
 4.保護者の関わり
〈各論〉成人期~壮年期の発達支援プログラム
 1.体力と運動能力の低下予防
 2.記憶力の低下予防
 3.コミュニケーション力の低下予防
 4.趣味を広げ、余暇活動をさらに楽しむ
V 退行・老化の予防
 1.退行の予防と支援
 2.健康管理と老化予防
第3章 ダウン症を正しく理解してもらうために
I きょうだいへの説明
 1.きょうだいに説明することの意味
 2.きょうだいへの調査から分かったこと
 3.いつ説明するのか
 4.分からないことは「分からない」と説明することの大切さ
 5.経験することを中心とした説明
 6.親亡き後に向けて
II 周囲の子どもへの説明
 1.幼児への説明
 2.小学生への説明
 3.中学生以上への説明
III 園・学校機関への説明
 1.幼稚園・保育所の先生方へ─初めての集団生活を楽しく過ごすために─
 2.小学校の先生方へ─飛躍の6年間へ向けて─
 3.中学校の先生方へ─青春を謳歌するために─
 4.高等学校の先生方へ─自立に向けて前進するために─
第4章 家族・福祉・地域支援・ネットワーク
 1.親の会
 2.障害の受容
 3.出生前診断
 4.きょうだい
 5.手記:母親として─子育て真っ最中の母親からのメッセージ─
 6.手記:私のお姉ちゃん─きょうだいからのメッセージ─
 7.手記:若竹ミュージカル─活躍するダウン症者からのメッセージ─
 8.手記:親の知恵を子を託す人に伝えていきたい─成人期ダウン症者の母親からのメッセージ─
第5章  困った!? こんなとき、どうする?─疑問解決・専門家からのアドバイス─
 言葉が遅い子への取り組みは?
 頑固な子への対応は?
 「彼氏ができた」と言われたら?
 「結婚したい」と言われたら?
 働く理由を聞かれたら?
 「ダウン症って何?」と聞かれたら?
 「高校に行きたい」と言われたら?
 いじめへの対応は?
 友達をたたいてしまうのですが…
 人の物を取ってしまう子への対応は?
 うそをつく子への対応は?
 「携帯電話が欲しい」と言われたら?
 リタイアのタイミングは?
 インクルージョンとは?
索 引
おわりに
(財)日本ダウン症協会紹介
編者紹介
執筆者及び執筆分担

>>続きを読む

序文・はじめに・あとがき 等
【はじめに】

 1.ダウン症支援の方向
 近年、「生涯発達」という観点が、知的な発達に障害のある人たちの支援や研究の分野においてもかなりのスピードをもって広がりを見せてきました。その背景には、わが国の長命化・高齢化の傾向が知的な発達に障害のある人たちにおいても同様に生じ、新たな課題として成人期や老年期の問題とその支援、さらに、それらを支える基礎的な研究が求められるようになってきたことが一因と考えられます。また、より若年のライフステージにおいても、例えば学齢期では障害児への教育が特殊教育や特別支援教育として整備され、教育科学として確立されてきたことや、乳幼児期においても乳幼児健診などの充実によって、障害や特別なニーズに対する早期からの発見や、その後の対応が整備されてきたことなどを背景にしていることが考えられます。
 知的発達障害の中でも、特にダウン症候群(以下、“ダウン症”とする)は、これまで短命であることが常識とされ、彼らにとっては宿命的なものであるとさえ考えられてきました(Masaki et al.、1981)。確かに、ダウン症は様々な合併症を併せ有することが多く、その中には心臓疾患のように生命予後に直接関係するものも多くあります。しかし近年の医学の進歩をはじめとして、教育、福祉、労働などの法律や制度の整備と、それに伴う社会資源の充実、さらに、障害に対して社会全体の意識が変化してきたことに伴い、ダウン症に対する支援は、急速に完成の方向に近づいてきたと言えます。特に乳幼児期から学齢期の療育や教育は、わが国のどの地域にダウン症児が誕生し、どの地域で養育されても一定のサービスを受けることができるようになってきたと言えます。
 このように医学に始まり、社会全体も障害の捉え方を変化させてきた今日の動きに後押しされるかのように、国際的にもダウン症の支援は一つの方向に向かいつつあります。その象徴的な動きの一つが、世界ダウン症連合が、3月21日を「世界ダウン症の日」として公式に選定し、それを国連が正式に認めて2012年から認定したことと言えましょう。

 2.ダウン症研究の動向

 これらの動きを支えるダウン症研究に関して近年の動向を国際的に見てみましょう。具体的には、国際レベルで知的障害に関する研究を行っている国際知的発達障害科学研究協会(IASSIDD:The International Associationfor the Scientifi c Study of Intellectual and Developmental Disabilities)が4年に1度開催する国際会議におけるダウン症研究の件数、対象とされたダウン症のライフステージ、そして研究テーマから見ることにします。

(1)発表件数に見るダウン症研究
 過去十数年間、2000年の第11回大会、 2004年の第12回大会、2008年の第13回大会で、対象をダウン症に行われた研究は、全発表件数のうち第11回大会では4.98%(65件)、 第12回大会は5.28%(69件)、第13回大会は3.89%(34件)と、3大会を通じて4~5%前後の発表件数を占めていました。すなわち、ダウン症を対象とした研究は、他の障害を対象とした研究と比較して必ずしも多くはないものの、一定の割合を保って研究発表がなされていました。

(2)ライフステージに見るダウン症研究
 それらの研究で対象としているダウン症のライフステージを乳幼児期、学齢期、青年期、成人期、老年期の5ライフステージに分類してみると、乳幼児期に関する研究は、第11回大会と第12回大会ではともに2件(7.7%、9.1%)の発表でしたが、第13回大会では0件でした。一方、学齢期・青年期は、第11回大会と第12回大会では各8件(30.8%、36.3%)の発表で、第13回大会で5件(31.2%)と件数は減ったものの、全体に占める割合に変化は見られませんでした。一方、成人期・老年期に関する発表は、第11回大会は16件(61.5%)、第12回大会は12件(54.6%)、第13回大会は11件(68.8%)と、発表件数とその割合が他のライフステージに比べ最も多く、しかも、増加の傾向が見られます。このことより、ダウン症研究は、乳幼児期・学齢期の若年齢層を対象とした研究から、近年、成人期・老年期へと研究対象の年齢が移行してきていることがうかがえます。

(3)研究テーマに見るダウン症研究
 それらの研究がどのようなテーマで行われているのかを知るために、各発表の表題からキーワードを抽出し、さらにそのキーワードをICF(国際生活機能分類:International Classifi cation of Functioning, Disability and Health)の構成要素に再分類してみました。具体的には、各発表のキーワードを健康状態(神経学、脳科学、生理学、健康などのキーワードが含まれる発表)、心身機能・身体構造(認知機能、知的機能、運動機能などのキーワードが含まれる発表)、活動と参加(行動、言語、コミュニケーション、スキル、社会適応行動などのキーワードが含まれる発表)、環境因子(家族、両親、きょうだい、支援技法、アセスメント法などのキーワードが含まれる発表)、個人因子(認知症(痴呆)、アルツハイマー病を含めた加齢に関するキーワードが含まれる発表)の5領域に分類しました。
 研究領域の中で健康状態は、第11回大会が28件(37.9%)、第12回大会が23件(28.1%)、第13回大会が24件(52.2%)と全発表件数に占める割合が最も高く、しかも、増加の傾向が見られます。この健康領域の中では、神経学、脳科学、生理学に関する用語をキーワードとする研究発表の割合が、第11回大会が4.05%、第12回大会が9.75%、第13回大会が17.39%と回を重ねるごとに増加しています。同様に、増加の見られたのが個人因子に関する研究領域です。この研究領域の中では、加齢(Ageing/Aging)をキーワードとする研究発表の割合が、第11回大会が5.41%、第12回大会が8.54%、第13回大会が8.70%と増加の傾向にありました。また、認知症(痴呆)をキーワードとする研究発表の割合も、第11回大会が9.46%、第12回大会が10.98%、第13回大会が15.22%と増加しています。このような加齢に関する研究発表数の増加は、対象とするライフステージで成人期・老年期が増加の傾向を示していることに一致しています。一方で、アルツハイマー病をキーワードとする発表件数の割合は、第11回大会が8.11%、第12回大会が6.10%、第13回大会が4.35%と減少の傾向が見られます。このことは、基礎医学の分野での加齢・老化研究や認知症研究の知見が、ダウン症研究に反映した結果と推測されます。すなわち、加齢・老化研究や認知症研究において、研究課題が老化や認知症の機序解明とともに、それらに付随する心理的問題とその支援の問題へと変わりつつあることが推測されます。それが、心身機能・身体構造に属する発表件数の減少と、反対に、活動と参加に属する行動をキーワードとする発表件数の割合が、第11回大会5.41%、第12回大会13.41%、第13回大会10.87%と増加の傾向にあることに表れているのではないでしょうか。
 また、環境因子の領域の研究も、第11回大会が21件(28.4%)、第12回大会が20件(24.4%)、第13回大会が7件(15.2%)と、減少が見られます。この研究領域の中では、特に、支援の技法やアセスメント法に関するキーワードを含む研究発表と、家族、きょうだいなどを含めた他の環境因子がキーワードとなっている研究発表の割合が減少しています。このことは、技法やアセスメント法、そして、家族、きょうだいへの対応に関して、これまでの早期療育を中心とした様々な研究の積み上げによって、一定の成果が得られた結果と考えられます。
 以上、研究テーマに見るダウン症研究からも、成人期・老年期を対象とした加齢・老化に伴う心理的問題や認知症などの問題に付随する心理的問題とその支援に関する研究が、近年、国際的に求められ、展開していることが明らかとなりました。

 3.『ダウン症ハンドブック』の改訂

 このようなダウン症に対する支援の発展とそれを支える研究の進展を受けて、本書『ダウン症ハンドブック』を8年ぶりに改訂することになりました。
 改訂版の最も大きな特徴は、初版の第2部と第3部をさらに発展させ、改訂版の副題として示した「家庭や学校・施設で取り組む療育・教育・支援プログラム」を、第2章「生涯発達支援プログラム─可能性を伸ばし、豊かな人生を歩むために─」として具体的に、数多く紹介したことです。これらは、この間のわれわれの研究成果に基づくものです。具体的には、生涯発達の各期を乳幼児期、児童期、青年期、成人期~壮年期の4つのライフステージに分けています。各期に関しては、総論を設け、発達の特徴と支援のポイントを解説しています。さらに各論を設け、各期に特徴的な支援に関し、具体的なプログラムを難易度順にSTEP1から紹介しています。プログラムは、使いやすさを考え、「ねらい」(目的)、「道具」(教材・教具)、「進め方」(具体的な手続き)、「支援のポイント」(達成できなかったときの支援の手だて、定着するための支援の手だて等)の構成より成っています。また、できるだけイラストを入れ、視覚的にも「見て分かる」ことを目指したプログラムとしました。さらに、本章の最後で、「退行・老化の予防」についても言及しました。
 第1章は、初版同様、ダウン症に関しての基本的な理解のために、「ダウン症の医学」について解説いたしました。
 第3章では「ダウン症を正しく理解してもらうために」と題して、「きょうだいへの説明」「周囲の子どもへの説明」「園・学校機関への説明」と、保護者をはじめダウン症と関わる多くの人が、特に知りたいダウン症の理解と啓発に関するページとしました。
 また第4章は、初版の第9章「地域ネットワーク・セルフヘルプ活動」を、「家族・福祉・地域支援・ネットワーク」へと拡大しました。特に、本人たちの活躍の様子や、本人からのメッセージのページを設けました。ダウン症のご本人、ご家族の方々より貴重な文章を寄せていただきました。大変感謝しております。
 最後に、第5章では、Q&A方式で、特に青年期以降の課題について、アドバイスのページを設けています。また巻末に、(財)日本ダウン症協会より、支部等の情報をいただきました。ありがとうございました。
 本書は、三十数年に及ぶわれわれの、そしてわが国のダウン症研究や支援の実際から得られた成果の全てを目次にと考え、作成いたしました。本書をダウン症と関わる全ての方々に読んでいただければという気持ちでいっぱいです。しかし、最終チェックを終え、印刷を待つばかりとなった本書のゲラ刷りを手にとり、ページをめくってみて、初版が出来上がったときと同様、なお残された課題の多いことに気付かされます。そこで改めて、今後もダウン症のご本人、そしてご家族の幸せを夢見て、さらに研究を続け、よりよい支援を求め続けることをここにお約束し、一時、筆を置きたいと思います。

 2013年3月
 菅野 敦

《文献》
 Masaki, M., Higurashi, M., Iijima, K., et al.(1981)Mortality and survival for Down syndrome in Japan. American Journal Human Genetics. 33. pp.629-631.


【おわりに】

 まず、本書の執筆に当たり多くの方々にご協力をいただきましたことを、この場をお借りして深くお礼申し上げます。
 私事で恐縮ですが、ダウン症のある人たちと関わるようになり、20年ほどが経過しています。初期に関わったお子さんは多くが成人し、社会人としてそれぞれ活躍をしています。ただ、その一方で、急激な退行現象を生じたり、早期老化現象から能力低下が著しい方の相談などもありました。成人して急激に変化したわが子について、「子育ての失敗でしょうか」と大粒の涙を流しながら尋ねた母親。「そんなことは、決してないですよ」と伝えることはもちろん、それ以上に「推測される原因、そして具体的な対応方法は…」と、的確な情報を伝えることの大切さを実感してきました。成人期以降の支援の在り方については、まだまだ適切な情報が保護者や関係者の方々にも十分に伝わっていないことを感じ、本書では特に青年期及び成人期の内容を増やしました。
 また、これまで北は北海道から南は九州まで、多くのダウン症のある人々やご家族と出会いがある中で、どの地域においても「まだ、言葉が出ません。なぜでしょうか?」「わが子ながら、この子の気持ちや考えていることが分かりません」「小学校に入学するけれど、担任の先生にダウン症のことについて、どのように説明すればいいのでしょうか」等の共通した相談を受けました。本書では、こうしたニーズの多い相談に、少しでも応えることができるように、最新の医学情報、生涯発達支援プログラム、さらには園、小・中学校、周囲の人などへの説明といった内容を含んでいます。
 私自身、微力ではあるものの、乳幼児期のお子さんへの療育活動、学齢期や成人期の方の相談活動などを続けてきました。「学生」から「研究者」へ、また「大学生」から「父親」へと、自分自身の人生も変化をする中で、ダウン症のある人やご家族との関わりは、変わらず続けてきたことでもあります。すてきな笑顔。着実な成長。素晴らしい才能を発揮し、絵の入賞を報告してくれた小学5年生。5年ぶりの再会時、「先生、俺の彼女だよ」と誇らしく紹介してくれた青年。そこでは、それぞれの輝いている瞬間、成長の喜びや驚きなど数え切れない人生ドラマに遭遇させていただきました。同時に、私自身ハッピーな気分になり、何より多くのパワーをいただきました。今日まで、支えていただいたのは、私自身だったと思います。ご本人、ご家族の皆さまに、心よりお礼申し上げます。
 最後に、本書がご本人にとって、またご家族や支援に関わる人にとって、少しでもお役に立てることがあれば、非常にうれしく思います。そして、私自身もこれからもダウン症のある人はもちろん、ご家族や関係者の皆さまにとって少しでも役に立つ研究成果を届けられるように努力していきたいと思います。
 2013年の幕開けに。郷里、高松の地より。

 2013年1月1日
 小島 道生

>>続きを読む

page top